Symposium on Atmospheric Composition Change

Frontier Research System for Global Change

Yokohama

20 November 2001

Variability of Marine Aerosol Properties and Its Impact

on Climate Change (VMAP)

 

Mitsuo UEMATSU

Center for International Cooperation, Ocean Research Institute,

University of Tokyo/CREST, JST (e-mail: uematsu@ori.u-tokyo.ac.jp)

 

The variability of chemical composition and amount of aerosols causes a temperature change on the earth's surface and change of marine biological activity over the oceans.  We focus on determining the regional and temporal variability of chemical composition of aerosol from Asia, where there is rapid industrialization presently taking place, to the North Pacific.  The atmospheric deposition of aerosols containing nutrients for marine biota may cause changes in primary productivity of phyto-plankton, food web structure and chemical property of aerosols in the ocean.  Based on observation results, we have been attempting model simulations to reproduce the results and to predict impact of aerosols on global climate change.  To achieve the goal, the Variability of Marine Aerosol Properties (VMAP) program pursues the comprehensive survey with the development of new instruments and modeling techniques.

 

             Many phenomena in nature are invisible.  Science revealed these enigmas by various ways.  Technical difficulty, overlooking, and neglect make phenomena invisible.  From this point of the view, I would like to introduce a few topics under the progress of the VMAP project started in 1998. 

 

Technical difficulty:  Although the source of marine organic aerosol was believed to be mainly from continents, our result with high time resolution measurements of organic aerosol on board ship revealed diurnal variations of organic aerosol, that is high concentrations in daytime and low concentrations at night, over the northern North Pacific and its marginal seas.  In addition, organic substance in micro layer of the sea surface is one of the sources to supply fine organic aerosol to the marine atmosphere. 

 

Overlooking:  Volcanic eruption from Miyake Island emitted significant amount of nitrogen compounds as ammonia gas and ammonium hydrogen sulfate particle to the surrounding area.  It was detected by a newly developed continuous micro flow ammonia analyzer, which equipped on a Self Cruising Ocean Observation Platform (SCOOP: Kan-chan) during a cruise near Miyake Island.  Few volcanologists have measured ammonia gas in volcanic plumes.  Supply of ammonium salts, as a nutrient to the surrounding ocean, will stimulate marine phyto-plankton activity and consequently alter the chemical composition of marine aerosols.

 

Neglect:  A boreal forest fire in Russia was observed over the northern North Pacific during the R/V Mirai cruise in the summer.  Simple calculation showed that emission of aerosols from boreal forest fires would be the same order of magnitude as that from Indonesia forest fires.  Biomass burning should be taken account for a source of aerosol and gases in the high latitudes and their diffusion to the mid latitudes.

 

 

地球フロンティア研究システム発足一周年記念シンポジウム

「エアロゾルとその気候影響」

東京大学海洋研究所

植松光夫

 温室効果気体による地球温暖化への影響は1827年、フランスの数学者フーリエ(J.B Fourier)によって指摘され、“greenhouse effect”と名付けられた。すでに1896年にスェーデンのアレニウス(S. Arrhenius)は、人間活動による二酸化炭素濃度が2倍に増加すると平均気温が5〜6℃上昇すると推定した。温室効果気体の研究が早くから進んでいたのに比べ、エアロゾルが気候変化に与える影響は1980年前半に「核の冬」のシナリオで話題となったのが最初でその後、1980年後半、アメリカのチャールソン(R.J. Charlson)らによってようやく海洋生物起源や人為起源の硫酸塩エアロゾルの気候への影響が評価され始めたばかりの状態である。

 エアロゾルについての気候への影響評価は、放射強制力(熱フラックス:ワット/平方メートル)変化とその強制力の変化の結果、温度や降水の分布にどのような変化が生じるかという二つにわけて考えられる。エアロゾルの放射強制力には太陽の輻射を直接的に遮蔽することにより地球温暖化を抑制する働き(直接的強制力)がある。一方、エアロゾルは雨や雪の生成に不可欠な氷晶核や凝結核となって気象現象にも寄与し、エアロゾル量の増減が間接的に地球表面を覆う雲の割合や反射率を変える働きもある(間接的強制力)。実際にはエアロゾルの粒径、個数、そして構成物質が、これらの強制力の大きさを左右する直接的要因となる。
 もっともエアロゾルの顕著な気候への影響は、噴火による大気中への火山灰の寄与である。1991年6月に噴火したピナツボ火山の影響は、地球平均表面温度を0.5℃低下させた。しかし北半球の産業地域から放出される硫酸塩と有機物エアロゾルによる直接的強制力は、それ以上であると考えられている。北半球でのエアロゾル量は南半球よりも多いことは衛星画像からも確認されている。
 大気中のエアロゾルの数が増えると、雲凝結核、そして雲粒が増え、白い雲となり太陽光の反射が大きくなり、表面温度の低下を導く。雲凝結核は海洋大気などに比べ、都市大気に数多く存在し、人為起源のエアロゾルの影響を強く反映している。洋上では周辺の雲に比べ、船舶からの排気されたエアロゾルから数多くの小さな雲粒からなる雲が存在していることが観測されている。
 現在、エアロゾルの放射強制力に対する推定量は非常に不確かであり、それをより確実なものにすることが必要である。また洋上に降水に取り込まれたり自然落下したりしたエアロゾルの化学成分が、海洋表層の生物に与える影響や、海洋生物を起源とするエアロゾルの影響など、大気と海洋の間での自然界と人為的な影響の定量的な見積もりもこれからの重要な課題である。


C化学の10年後  2000年4月

エアロソル:未知なる粒子・変貌する粒子

 

東京大学海洋研究所 植松光夫

 

 エアロソルを分類するのに、粒径別、形状別、光学特性別、密度別、発生源別、生成過程別、化学組成別、平均滞留時間別、水溶性かどうかなどを思いつく。その分類方法は物理的計測と化学的計測によってリアルタイムで測定できる項目から、相当時間積算して必要量を得たうえで測定できる項目まで多岐にわたる。その結果、それぞれの計測手法でみているエアロソルはまったく別な粒子集団をエアロソルの持つ別の働きを知るために測定していることになっているかもしれない。特に、化学成分分析はエアロソルの平均滞留時間が気体成分に比べ、かなり短く、観測地点の気象変化とともに組成や濃度が短時間で大きく変わっていく。それにもかかわらず、数時間以上、数日間という採取時間の長さから時間変動を捉えることは主要化学成分を除いて、困難な状態である。

 現在の測定技術では、エアロソルの化学組成分析による各成分の重量濃度の和が、実際に採取したエアロソル乾重量と一致するかというと、そうとはいかない場合が多い。うまくいく場合はそのほとんどが海塩粒子あるいは土壌粒子で占められているなど、主要成分が相対的に他の成分の占める割合を小さくし、その測定誤差を小さくしていることが多いのではないだろうか。エアロソル自体、水溶性のものが多く、また揮発性に富む成分もあり、従来のフィルターによる採取での直接的な比較では、見逃しているものがあっても不思議ではない。またすでに試料として得られた物質について、特に有機化合物については同定できるものが全有機物質の50%にも満たない。これは海水中の溶存態有機物や有機物粒子についても全く同様である。

 1980年代の半ばに近畿大学理工学部化学科の研究グループが、フィルターろ過した0.3μm以下の外洋大気を水蒸気除去後、液体窒素による低温トラップで捕集し、鉛や銅がフィルター上の濃度より一桁以上高い濃度を報告している。この研究は国内のいくつかの学会で大きな注目を浴びたが、その後国際的な評価を受ける状況には至っていない。またその存在状態が揮発性の高い有機体金属気体であるのか、サブミクロンよりも微小な粒子であるのかも明らかではない。海洋が発生源である可能性も否定できない。海水中の重金属濃度からでは、大気中のこれらの金属元素の高濃度を説明するのには困難である。生物による揮発性化合物や1980年代前半に研究を進められた海洋極表層(数十μm)での有機物や重金属の濃縮層とも大きく関わってくるのではないだろうか。もし、これらの結果が正しいとするならば、地球規模での陸、大気、海洋間での物質循環過程を見直す必要が生じてくる。また、有機エアロソルが量的に高濃度ではなくても、粒径が小さいがゆえに高粒子数濃度であり、放射収支に考慮すべき存在として見直されるのと同様に考えなければならなくなるかもしれない。

 エアロソルの化学はある成分の濃度を測定し、その変動、起源、生成要因を明らかにすることだけではなく、物理的な計測も同時に行うことにより多くの気候に関する現象が解明できる手法として確立していかなければならない。その面では、電子顕微鏡とX線マイクロアナライザーを用いて個々の粒子形状と組成を測定する手法や個々の粒子をレーザーで粒径測定後に質量分析計で分析する機器が積極的に使われつつある。しかし、それらの化学分析が可能な粒径は現在0.8μm以上の粒子に限られている。0.001から0.1μmのエイトケン粒子については、その化学成分が気体から粒子化した二次生成粒子であるとしかわからず、直接化学分析をした例を知らない。エイトケン粒子が現在地球規模のエアロソルによる温暖化抑制、特に雲形成を通して間接的効果に重要な役割を果たしているとするならば、エアロソル化学のこの分野での貢献は期待に応えられず極めて小さいといえる。

 物質循環の観点から見た場合、その定量的に物質の流れを把握するという従来通りの地球化学的な観測は有効である。気象現象は突発的なものが多く、長期間の連続観測は不可欠であることはいうまでもない。気候変化による物質循環のフラックスやその分布の変化が、海洋や陸上の生態系に影響を与える。そこでの発生量の変化が大気中のエアロソル分布や組成、濃度を変え、最終的に気候変化とつながり、降水現象や放射収支を変えていくという、大気中のエアロソルだけの気候変化に対する影響だけではなく、エアロソルの除去や生物活動に伴うもうひとつの間接的影響があるということである。

 今後10年、分析機器の発展によって今まで化学分析できなかった成分の同定が可能になる。測定可能成分はその測定時間の短縮が進み、リアルタイムでの変動が可能となる。より微小な粒子の化学組成や存在状態を解明していくことや、エアロソル組成別の分布や降下量を予測すること、その変化が気候、生態系などにどんなパータベイションを引き起こすのか、モデルによる再現と予測が時空間変動の大きいエアロソルにとって不可欠なものとなるであろう。



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